かばんうりのガラゴ     
  島田ゆか 作        文渓堂

 

 皆さんご存知ですか?テレビの画面は一秒が三十コマ(フレーム)で出来ているのです。子ども達はテレビを見ている時、膨大な画像と音の刺激を受けていて、テレビに対して受け身で向かっていても、一見、集中しているように見えてしまう。児童文学者の松居直さんが「乳幼児期のテレビの見っぱなしが、人の話が聞けない子どもを育てる」と言うのもうなずけます。

 そんなテレビの刺激に負けない、子ども達を夢中にさせている絵本の一つが「かばんうりのガラゴ」です。お話はいたって単純、旅するかばん屋のガラゴが出会う動物達に一風変わったかばんを売って行くという内容です。しかし、この絵本、子ども達を(そして大人達も)夢中にさせる仕掛けがいっぱいなのです。

 ガラゴのかばんはガラゴと同じ左右色違いの靴をはいて自分で歩きます。カップはいつもガラゴと同じ目をしていて、ガラゴが寝ると、いっしょに目を閉じてしまうのです。ガラゴ達の食べているスイカをカブトムシが一切れ持って行ったり、残ったスイカを(耳が三つあるウサギの様な)オジギちゃんが食べに来て、毛虫に怒られ、サングラスとスイカを交換して帰って行く…。お話の中には出てこないのに絵の中にはそんなエピソードがしっかり描かれています。

 この絵本を息子達は2歳なら2歳なりに、7歳なら7歳なりにそれぞれ楽しんでいます。そういうことを再確認出来るだけでも子を持つ父親としては嬉しく思います。

 本を持たされると、「読めるか?」「わかるか?」「何が書いてある?」の質問攻めではちょっとかわいそう。黙って絵本を開いている子どもの脳みそが、大人の考えが及びも着かないぐらいグルグルフル回転しているって想像してみるのも楽しいものです。

                                                                            (むっちパパ)